*[本]働くということ

働くということ

働くということ

「日本人の所得格差は八一年以来拡大を続け、九九年は過去最高に開いた。「日本が平等社会というのは幻想に過ぎない。貧富の格差は独仏並みで、米国に近づきつつある」。京都大学教授の橘木俊詔(60)は中流は崩壊したと言い切る。学歴社会、年功序列、前例踏襲・・・・・。働くことの意味を強く意識しなくても、「横並びでやっていればうまくいく」。そんな居心地の良いシステムは、もはや通用しない。」

「NECは二〇〇二年四月から、課長以上の管理職一万二千人の職務内容と報酬を社内ネットで公開した。ガラス張りにして管理職の自覚を求めるとともに、適材適所の人材配置を進めるのが狙いだ。秋からは四十歳社員の「市場価値診断」も始めた。社員の申告シートに基づいて外部コンサルタントが能力や業績を分析し、社外で通用するか診断する。」

「会社と対等
受け身ではなく、自ら進んで能力を磨き、会社と共に利益を享受する−−−。終身雇用のもとで会社ともたれ合う
中流秩序」から決別することが、「組織の中で働くこと」の新たな意味を生み出す。」

「豊かな時代にあって、食べるだけならフリーターでも十分しのげる。逆に言えば、それだけに働くことの根源的な意味を一人ひとりが問われているのではないか。(作家 黒井千次)」

「若者は時として粗削りだ。しかし、可能性を秘めた才能は先輩世代には見えなかった「働くこと」の新しい意味も教えてくれる。」

「労使対立よりも”労労対立”に目を向けるべきだ。若年男性、女性、六十歳以上の男性というグループと中高年男性の利害が対立している。企業は中高年男性の雇用を温存する代わりに新卒採用を抑え、若年失業を増やしてしまっている。
・・・
働き手が変わっているのだから、企業も変わらないと。大事なのは権限委譲だろう。失敗してもいいから、教育訓練と考えて若い人にも仕事を任せ、やる気を出させる。若年層が下積み生活を嫌がるのはこらえ性がないからではなく、管理職になるまで会社がもつかどうか分からないからだ。仕事を任せた方が能力は上がる。上智大学で教えた卒業生に聞くと日本企業は責任を持たせてくれない。逆に外資系は重い責任を負わせる。五年たつと能力に格段の差がつく。日本企業は四十年かけて貢献と報酬の収支を合わせてきたが、今後は五年で収支が合うようにすべきだ。(日本経済研究センター理事長 八代 尚宏氏)」