[本]ブレイブ・ストーリー(下)

ブレイブ・ストーリー (下) (角川文庫)

ブレイブ・ストーリー (下) (角川文庫)

ワタルはふと思った。僕には、どうしてこのヒトが幻界の旅を打ち切ったのか、その理由がわかるような気がする。
きっとこのヒトは、いつもこんなふうだったんだ。胸にあるのは自分の言い分だけ。見るものも、自分の見たいものだけ。求めるものも、自分のほしいものだけ。傷つくのも、いつも自分だけ。
思いどおりにならないものを捨て、気に染まないものを切り離し、そこにあっても見ないふりをして、ひたすらに求めるものはただひとつ。自分が求めるにふさわしものだけ。
それでは何処にも居場所なんかつくれるわかがない。誰の親切も届かなければ、誰に裏切られようと、その兆候を感じることだってできるはずがない。