電通の正体

広告業界のしくみと電通の強さがよく理解できた。

TVのスポット広告出稿量をわかりやすくしている反面で、セット販売という側面があるという指摘が新鮮だった。
企業の宣伝部門としては、電通が巨大なだけに、広告関連のノウハウが代理店に蓄積され、クライアント側はいかに代理店にいい仕事してもらうかがポイントのようになっている。したがって、代理店に丸投げするような感がある。国際標準に照らして、1業種1クライアントといったフェアな取引に段々と移行していくと思われるので、広告代理店の使い方をもっと考えていくべきと思う。

クライアントは差別しろ

電通はざっくり言って、クライアントを三つに分ける”ビジネスモデル”を採っているんですよ」と、株式会社・電通のある社員は語った。
まずは業界ナンバーワンで、長くおつきあいしてきた広告主企業である。年間約八〇〇億から一〇〇〇億円の広告宣伝費を使い続けているトヨタ自動車や、これに続く松下電器産業本田技研工業花王KDDIなどである。電通にとって売上げが毎年一〇〇億円を超える、これらの得意先企業のためには、エース級の社員でチームをつくり、全社を挙げて取り組む。このレベルの広告主を落とせば担当のクビが飛ぶとさえいわれている。

スポットCM枠が、「セット販売」されていることについては、独占禁止法上の疑義もある。「セット販売」といいうのは、いわば視聴率が低くて売れ残るようなスポットCM枠を、引き合いの強いスポットCM枠と一緒にうってしまうというもの。いわゆる優越的な立場を利用した、一種の抱き合わせ販売みたいなものだ。これで一番得をしているのは、スポット取引でもっとも大きなシェアを持つ電通だろう」(元代理店社員)

テレビ関係者も「視聴率の調査を電通の関連会社(ビデオリサーチ)が引き受けることで、テレビ広告料が水増しされやすい業界構造になっているのではないか」と指摘した。