偽装請負

出張の帰り、三省堂でWeb関連の本を探したものの見つからず、つい手に取ったこの本を買って新幹線で読んだ。
最近少なくなった調査取材の力作と思う。
帯がすごい。”これで景気回復と言えるのか? 勝ち組企業の儲けの裏側”

企業側に「おいしい」システム

ところが、偽装請負の場合、発覚しない限り、これら一切の責務を負わずに済む。たとえば、メーカーが、ある製品を低コストで生産したいとする。以前であれば、低賃金のパートか期間工を雇い入れたが、近年はもっといい方法を見つけた。まず人材サービス会社(=請負会社)と請負契約を結ぶ。契約の主たる内容は、期日までに製品を完成させ、納品することだ。従来の下請けならば自前の工場で製品をつくり、発注元のに納めるところだが、偽装請負の場合は、自前の設備など要らない。請負会社がするのは人を集め、メーカーに送り込むだけ、あとはメーカーに任せっきりだ。

請負労働者が働く場所は、メーカーの工場内。細かい指示は、メーカーの正社員が出す。偽装請負が違法とは知らない請負労働者は、この指揮・命令に従うほかはない。こうしてメーカーは雇用の義務や安全などの責任を負わず、請負労働者を手足のように使って、低コストで自社製品の製造を続けるわけだ。

偽装請負の実体は、労働者派遣そのものだ。しかし、請負契約を装っているので、労働者派遣法の制約はすべて無視する。派遣労働者の場合、一定の年限が来れば、直接雇用の申し込み義務が発生するが、請負と偽っているので、申し込まない。つまり、同じ顔ぶれの労働者を何年も都合よく使うことになる。請負という契約そのものは古くからあり、民法に規定されている。しかし、製造請負を管轄する役所はなく、偽装請負は野放しで増え続けた。

責務から解放されたと思ったとき、企業の行動は大胆だ。・・・・・