自壊する帝国

手嶋龍一氏と佐藤優氏の本からこの本にたどり着いた。図書館で予約した。

カトリック教会の聖職者が独身制をとっていることは有名だ。プロテスタント教会は、地上に聖なる人はいないと考えるので聖職者という概念はない。従って、聖職者ではなく教職者(牧師)という。牧師は結婚して家族をもつことができる。一見するとカトリック教会は非近代的な因習に凝り固まっているように見えるが、実は独身制には合理的根拠がある。・・・・・
中国やオスマン(トルコ)帝国の場合、去勢制、つまり宦官制度を設けることで、権力が集中する官僚が生物的に後継者をもつことができないようにした。カトリック教会の場合は生物的去勢は行わなかったが、聖職者を社会的に去勢したのである。・・・・・
神父が子供をつくることは、現在もそれほど珍しいことではない。ただし、神父である限り子供はいないという建前になっているため、権力や利権をもった聖職者のポストを子供に与えることはできない。社会的に聖職者の権力は一代限りとなる。 

「結局のところ、ソ連はどうして崩壊したのでしょうか」
ブルブリスは少し考えてから答えた。
「自壊だよ。ソ連帝国は自壊したんだ。一九九一年八月の非常事態国家委員会によるクーデター未遂事件は、政治的チェルノブイリ原発事故)だ。ソ連という帝国の最中心部、ソ連共産党中央委員会という原子炉の炉心融解を起こし、爆発してしまったということさ。ゴルバチョフはゴミだ。あいつは共産全体国家であるソ連の維持しか考えていなかった。そして、ソ連という欠陥発電所の原子炉を締め上げることで、電力が確保できると勘違いした。その結果、国家が崩壊した。」