家族というリスク

家族旅行の空き時間で読もうと図書館で借りた。

少子化のほんとうの理由

少子化の要因については、女性の社会進出説から子育て支援の不備説まで、さまざまな説が乱れ飛んでいるが、私は、パラサイト・シングルの増大が、少子化の直接の原因であると唱え続けている。
調査でもはっきりしていることだが、結婚した夫婦は、平均二・二人子どもを産んでおり、この数字は二〇年間ほとんど変化していない。だから、未婚者の増大、つまり結婚を遅らせたり結婚しない若者が増大していることが、少子化の直接の原因である。
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つまり、一人暮らしの人は結婚の敷居が低く、親同居のパラサイト・シングルは、結婚して、二人で所帯を持つと、途端に生活水準が低下する。誰もわざわざいまよりもゆとりのない生活をしたいと思わない。だから、日本では未婚化が進むのだ。
アメリカやヨーロッパ(南ヨーロッパを除く)で結婚や同棲が多いのは、成人したら親から自立して暮らすことを求められるからである。友達と一緒に住むケースも多いが、どうせ住むなら好きな相手と一緒にと思うのだろう。

専業主婦の黄昏

企業が安定した雇用と、増大する収入を提供できなくなったとき、専業主婦システムは、その経済的、心理的存在基盤を失う。・・・
収入の伸びが期待できない男性と専業主婦の組み合わせでは、将来の生活に希望が持てなくなったのだ。既に結婚している専業主婦は、夫の給料を補うため、パート労働に出るようになる。一方、未婚女性は、収入が高くなる見込みが薄い男性との結婚をためらう傾向が強まる。

日本では、二一世紀を迎える今となって、男性サラリーマンの雇用が不安定化し、収入上昇の見込みが立ちにくい状況になっている。このような状況では、サラリーマン--専業主婦方家族には、希望が失われていく。まず、結婚時点で、若い男性一人の収入では、豊かな生活を維持するのが難しくなっている。しかも、結婚を遅らせる傾向はますます強まっている。結婚したとしても、夫の給料が上昇するという見通しがもてない。専業主婦のままでは、豊かな生活を築くという夢は実現不可能なものになりつつある。

教育に希望がもてなくなる時

現在日本で生じている少子化という事態は、子どもにとって「教育される」という動機づけが失われることを意味する。少子化社会とは、子どもにとって相対的に楽になれる社会である。楽になるかわりに、教育に対する「希望」を失うのである。私は、教育に希望がもてなくなっていることが、現在、問題になっているさまざまな教育問題、例えば、学力低下や遊び型非行、動機不明の青少年犯罪などの一因になっているのではないかと考えている。