チャイナ・インパクト

現代中国企業の実力

中国企業がどれくらい様変わりしたか、実例をあげて検証してみよう。
まず取り上げたいのが、東軟集団(Neusoft Group)だ。遼寧省省都瀋陽にあるこのソフト会社は、その社名を地元の名門・東北大学(North Eastern University)からとり、マネージャーの多くが大学の教授らである。
アジアウォーク誌によれば、東軟は株式上場されたソフトウェア会社としては中国最大であり、二〇〇〇年の売上高は一億三四〇〇万ドルだという。特筆すべき点としては、日本のアルパインとのジョイントベンチャー、東大アルパインソフトウェア(Neu-Alpine Software Company)の設立や、上海証券取引所に上場された中国初の大手ソフトウェア会社となったことが挙げられる。
東軟は、オラクルよりもコストが低いソフトウェア会社としてスタートし、今ではカーナビやメディカル・エレクトロニクス(ME)と呼ばれる医用電子機器の分野へも進出している。

ガリージョンの集合体としての中国

中国では言語、文化、交通によってメガリージョンができあがり、一つの経済単位となっている。ここが特異な点だ。また、中国のメガリージョンは、およそ一億人規模の人口単位になる。ヨーロッパの人口がおよそ二億五〇〇〇万人だから、ヨーロッパ全体は中国のメガリージョン二つか三つぶんの大きさでしかない。
さきほどの話に戻ると、均衡ある国土の発展を目指した訒小平による計画経済下の改革・開放経済が、ふたを開けてみたら自然発生的なクラスター、自然発生的な工業地帯の形成を促してしまった。この工業地帯は、その中で激しく競い合う都市、地域国家から成り立っており、また他のメガリージョンに対しても強烈な対抗意識を持っている。

一〇年後に破裂する「一人っ子政策」という爆弾

中国の経営者の多くは、公式の場から場所を変えて話をすると、「一〇年の間に全部やらなければダメなのです。中国はすべてをこの一〇年でやりつくさなければならないのです」ということをしきりに強調する。それだけ近い将来に対する危機感がある。
中国というのは強烈な超競争社会なので、今の子供たちも一生懸命勉強し、競争する。しかしそれでも、一〇人兄弟で育ったとか、放置されて大きくなったという今の世代に比べ、大分やわになっている。中国人が、国家の盛衰にかかわる問題として憂慮しているのは、このことなのだ。

中国政治体制の行方

中国の政治家の発言:
「先富起来(先に富める地域は先に富みなさい)」(訒小平
「白い猫でも黒い猫でも、ネズミを捕る猫はいい猫だ(主義主張よりも実利を上げよう)」(訒小平
「もし香港並みの返還を認めるのであれば、われわれは五〇年間は台湾の機構を一切いじりません」という主旨の発言(銭其琛外相)

一国二制度」として強かに経済発展させてきた中国幹部の発言から、大前氏は「第三次国共合作」を次のように予測する。

中国の思惑はこうだ。まず、国名を中華連邦などと変更し、独立国家共同体による連邦国家になる。台湾には「台湾国家として生きなさい。しかし中華連邦の一員ですよ」と条件を出す。台湾は、イギリス連邦下のカナダやオーストラリア、あるいは旧ソ連であるCIS(独立国家共同体)の中のウクライナという感じになってくる。

また、共産主義の終焉についても予測している。

江沢民はこの時、「三つの代表」という理論を初めて打ち出した。
三つの代表というのは、まず先進的な生産力の発展を代表したいということ。共産党は、生産性の改善や近代化、工業化、化学の進歩---そういうものを先導していくシンボルでありたい、代表でありたいと言った。
二つ目には、先進的な文化の方向を代表すること。美しい国土をさらに改善してゆき、地球平和、地球環境に優しい中国の国土というものを保全する。そういう中国を守る代表でありたい。
そして三つ目に、すべての中国の代表でありたい。広範な人民の利益を代表していきたい。
これが「三つの代表論」である。この三番目の文脈の中で、資本家や金持ちも共産党に入るべきだと江沢民は言い出した。

中国では今、孫文の研究が盛んになってきている。その底流には、「近代中国建国の父が毛沢東だとは言いにくい。やはり孫文だろう」という感覚がある。私は中国に行くたびに、こうした風潮をそこここで感じる。