マネー動乱-市場を破壊する激流

グローバル化規制緩和で変化

金融政策の効果に変化が起きたのは1990年代に入ってからだったろう。この時期に、「80年代まで世界各地で起きたハイパーインフレがなくなり、(インフレが小規模になって)物価が安定した」と東短リサーチのエコノミスト、加藤出は言う。
インフレが収まると、投資家や企業、個人の間で資産価格の先行きに期待が膨らみ始める。物価が急騰する時代には、資産に投資をしても、インフレで貨幣価値が落ちるから利益が上がるかどうか見込みにくかった。しかし、「物価が安定するのなら資産に投資をして、その値上がり益を享受しやすくなる」というそれだ。
こうして人々の気分が、乾燥した枯れ木のようになったところに低金利という火を差し出せば、バブルが燃え上がるのは自然の成り行きでもあった。インフレ収束の背景にあったのは、グローバル化による生産拠点、調達の世界展開でモノの生産コストが劇的に下がったこと、そして金融の規制緩和で投資マネーが世界を激しく動くようになったことだ。・・・・・
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巨大化した投資マネーは今、かつてない時代を現出しようとしている。巨額の経常赤字を垂れ流しても、世界の資金を集め、国内外の投資に回して利益を上げてきた米国とドルの時代は、サブプライム問題の噴出とともに、たそがれの時を迎えたように見える。
その地位低下をもたらした真のパワーは、巨大な投資マネーの奔流だった。肥大化し、激流と化した投資マネーは、利を示さなければ、米国の力をもってしても、集めることはできず、より有利なものへ即座に避難して経済をかく乱するからだ。
中央銀行さえも”無力化”し、世界を揺り動かし続けるマネーの世紀。我々は今、そこにいる。