円安バブル崩壊 金融緩和政策の大失敗

円安バブルだと認識すると、筆者の指摘するようにさまざまな現象が説明できる。個人資産の運用方法もこれを考慮して機動修正が必要だ。
基礎年金と称して、サラリーマンの積み立て金が国民年金の徴収漏れ分に使われていることには、憤りを覚える。

景気回復は改革ではなく円安で実現した

現在の日本は、株価の崩壊とも言える現象に直面している。
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これは、ここ数年の日本企業の収益増加と景気回復が、円安によって支えられていたことを明白に示している。仮に日本の製造業の体質が改善され、真の競争力を獲得していたのであれば、円安に依存しなくとも収益が上がるはずだ。だから、円高が進んだとしても、株価がこれほど下落するような事態にはならなかったはずである。つまり、ここ数年の企業収益の増加がむしろ異常だったのであり、それが正常なレベルに戻っているだけなのだ。

年金改革をいかに進めるべきか

年金に関する本当の争点は、別のところにある。政府与党は、社会保険庁改革のあとに年金制度を一本化する方針を掲げている。それが不必要とは言わないが、真の問題は年金財政の維持可能性である。
つまり、保険料と給付額をどうするかという問題だ。現在の財政構造は、将来に向けて維持可能で安定的なものにはなっていないのである。これ以外に、支給開始年齢、在職老齢年金、第三号被保険者(サラリーマンの妻)などについても、さまざまな問題がある。

不足分をサラリーマンが補填している

目標が八割でしかないことが、そもそもおかしい。本来であれば、一〇割を徴収できなければ、制度は破綻するはずだ。なぜ、八割でよいのか?
この答えは簡単だ。不足分をサラリーマンが補填しているのである。
こうなる理由は、基礎年金の給付に要する費用を、各制度の加入者数で按分していないからだ。按分の際に用いられるのは、厚生年金や共済組合などの被用者年金については保険料を本来支払うべき者の数だが、国民年金については、保険料を実際に納付した者の数である。だから、徴収率が落ちれば、被用者年金の負担は増えるが、国民年金の負担は増えない。
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国民年金保険料徴収が始まったのは一九六一年四月だから、八〇年代の後半になってから、本格的な給付が始まった。このときに導入されたのが「基礎年金制度」である。「すべての国民に共通の年金」という触れ込みだったのだが、その実態は、国民年金の全額を基礎年金と観念し、厚生年金の定額部分を基礎年金と観念し直したというだけのことである。
ただし、これによって、国民年金の保険料の未納分を厚生年金や共済組合で補填するという仕組みが可能になった。これは、きわめて巧妙なトリックであったと考えざるをえない。
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制度が現在のようになっている理由はただひとつ。サラリーマンの保険料は給料から天引きされっるため、取りはぐれがほとんどないことである。現在の日本の公的年金を支えているのは、被用者年金保険料の天引き制度である。サラリーマンはこの現実を直視すべきだ。