*[本]事例で学ぶアメリカのマーケティング

事例で学ぶアメリカのマーケティング

事例で学ぶアメリカのマーケティング

勝ち顧客

ポンティアックGMCでは、顧客のライフスタイル層別にカストマイズした雑誌を年に三回、発行している。どの号も担当ディーラーからの手紙で始まり、表紙デザインから担当ディーラーで使えるクーポンに至るまでがカストマイズされ、顧客のライフスタイルに応じた特集記事がそれに続く。顧客は綴じ込み返信はがきでプロフィールを更新できるので対話もできる。製品案内を取り寄せたり、意見を述べたり、質問もできる。この雑誌には、二二〇〇万通りの組み合わせがある。
このはがきの応答率は十八%に上り、こうして対話を重ねることで雑誌は少しずつ「スマートに」なっていく。ポンティアックGMCでは、二五万人の顧客からライフスタイル・データを集めており、毎日五〇通から一〇〇通のはがきを受け取っている。集めるデータは全て顧客が自主的に送ってくるものなので、それを個別対応を洗練するために使っているのだ。」

まとめ

・CRMとは「ダイレクト・マーケティング」ではない。新しい、別の技術群を必要とするものだ。
・インターネットは大切なCRMのツールである。
・CRMの真の目的は、顧客の行動を管理する(そして変えさせ、強化する)ことだ。
・全ての顧客との接触やコミュニケーションは、顧客本位(相手にとって有意義)でなければならない。
・大半のロイヤルティ・プログラムはもはや特別でがない。どんな割引やポイント制をつくっても、あっという間に競争相手に模倣されてしまう。結局、体力勝負になってしまう。
・顧客は平等に扱われたいとは思っていない。個別に扱われたいのだ。
・CRMは顧客に対してポイント制や割引以上のものを提供しなくてはならない。

取引しやすいウェブ・サイト

アマゾンでは事前登録や過去に買い物をした人のアクセスの際にスクリーン上部に「個人向け推薦書」の表示を出している。これは、他の顧客による最近の買い物をリアルタイムで検索したもの。毎日、顧客ファイル全体を更新している。

CRMの秘密は相手の話を聞いて学ぶこと。話しかけて、売り込むことではない。CRMとは顧客に力を与え、喜ばせ、企業とのやりとりにおいて主導権を感じさせることである。ウェブ・サイトにいかに顧客を呼び込むかを考えてはいけない。顧客にとって、いかに取引しやすくするかを考えるのである。
ウェブ上では、消費者はどんな商品についても、最も安い値段を探し出せる。ウェブ上でもっぱら販売を目的とするなら、常に最安値を提供できなければならない。しかしドン・ペパーズは、ウェブには他にも素晴らしい機会があるという。「顧客のために取引しやすくし、ロイヤルティを維持させるためのワン・トゥ・ワン関係を築けば、いくらでも請求できるとは言わない。しかし関係を深めるほど、利益は増える」

金融機関のターゲット・マーケティング

預かり資産六六〇億ドル、顧客数約七〇〇万人のキー・コープは、顧客当たりの利益率が低迷していることに気づいた。何百万ドルも投じてダイレクト・メール、テレマーケティング、マス広告を展開してサービスの幅広さを訴えたが、結果は空しかった。同行では中核顧客への重点対応はしていなかった。誰が中核顧客かを知る術がなかったからだ。
彼らは、野心的なCRMプロジェクトに乗り出した。最新式のデータ・ウェアハウスによって顧客情報を全て一ヵ所に集約し、全体的な営業・マーケティング判断を下せるようにしたのだ。顧客志向の銀行にならない限り、成功はおぼつかないと腹を固めたのである。
彼らはまず、マーケティング上の戦略要素として一五〇項目を洗い出した。年齢、小切手発行額と預金高のバランス、大きな貸し出しとその期限、子供の数、ATMの利用頻度などである。項目はどんなタイプの顧客がどんな商品を買っているのか、それらを買う動機は何か、似たような属性の顧客がそうした商品に興味を示す程度はどうか、どんな流通チャネルを好んでいるか、顧客を逃がす状況とはどんなものかにまで至った。彼らの目標は、たった一種類の商品しか使ってくれない顧客を大勢獲得することではなく、中核顧客との関係を深めることだった。

法人客のロイヤルティとは?

IBMでは上得意である個人客向けのプライベート・ウェブ・サイト「ゴールド・サービス」も実施している。このサイトではIBMの販売員の写真やプロフィールも見ることができ、加えて個人宛の情報や、それぞれの顧客向けの価格やサービスなども提示する。リアルタイムのビデオ・チャットえ顧客が担当販売員と話し合うこともできる。