*[本]ザ・ゴール2 思考プロセス

ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス

ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス

「<思考プロセス>では、こうした問題は一つひとつ独立した問題ではなく、むしろ原因と結果という強い因果関係で結びついていると考えています」
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「この原因と結果の因果関係をちゃんと認識できるまでは、状況をはっきりと把握することはできません。ですから、まず最初にシステマティックな方法を用いて、その状況におけるすべての問題を関連づける因果関係を図に表します。この図を<現状問題構造ツリー>(Current Reality Tree)と呼びます。このツリーを構築できれば、問題はすべてに一つひとつに対応する必要がないことがわかります。コアの部分には原因が一つか二つしかないからです。」
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「そのとおりです。一つか二つのコアの問題が他のすべての問題の原因なんです。問題のほとんどは症状であって、問題ではない。そうした症状のことを、私はUDE(Underesirable Effects:好ましくない結果)と呼んでいます。コアの問題を原因として派生する結果なんです。」
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「<思考プロセス>はそのための方法なんです。まずUDEすなわち好ましくない結果を五つから一〇ほどリストアップします。それから手順に従って進んでいくと、だんだんとコアの問題がはっきりとわかってきます。同時に、勘もだんだんと強まっていきます。次のステップでは、コアの問題のソリューションを見つけるわけですが、勘を強めておくことがここでは非常に重要となります」

思考プロセス(Thinking Process)

ゴールドラット博士が開発した問題解決手法。「何を変えればよいか(What to change?)」「何に変えればよいか(What to change to?)」「どのように変えればよいか(How to cause the change?)」といった一連のプロセスを系統的に考えることから思考プロセスと呼ばれる。思考プロセスを実行するためのツール(論理ツリー)には以下が用意されており、順に系統的に使用したり単独で使用したりする。(1)現状問題構造ツリー(Current Reality Tree)、(2)雲(対立解消図=Cloud)、(3)未来問題構造ツリー(Future Reality Tree)、(4)前提条件ツリー(Prerequisite Tree)、(5)移行ツリー(Transition Tree)。

現状問題構造ツリー(Current Reality Tree)

問題解決にあたって「何を変えれば最大の結果が得られるか)を明確にするための手法。まず現状の問題点(好ましくない結果=UDE)を列挙し、これらの因果関係を見つけることで、その中から”変えるべき”根本的問題を見つけ出す。思考プロセスを系統的に実行する場合、この現状問題構造ツリーの構築が最初のステップとなる。

好ましくない結果(Undersirable Effects=UDE)

現状問題構造ツリーを構築する際に列挙する現状の問題点。通常、目にする問題点の大部分は本質的な問題ではなく、もっと根本的な問題の結果や症状にすぎないことからこう呼ばれる。

まず分析しようとする対象の表面的な問題点を列挙して、それらの原因をどんどん遡る。これはトヨタ生産方式で使われる「なぜを五回繰り返す」という手法に類似しているが、最大の違いは「なぜを五回」は五段階の直線的な因果関係を表示するのに対して、<思考プロセス>は複合的な因果関係を表示できるため二次元の因果関係を表現でき、したがって多数の好ましくない結果(UDE)に共通するコアの問題を表示できることである。・・・・・根本原因とは、ちょうどトヨタ生産方式の「なぜを五回繰り返す」結果出てくる原因のようなもので、これ以上原因を遡るのが困難である。

雲(Cloud)

問題の根本的な原因となっている矛盾や対立(コンフリクト)を解消するための手法で「対立解消図」とも呼ばれる。五つの枠が矢印(因果関係)で結ばれた定型的なフォーマットを使用。これらの矢印のうちいずれかの矢印を解消するような画期的なアイデアを注入することで矛盾や対立を解消する。思考プロセスを系統的に実行する場合、現状問題構造ツリーで根本的な問題を見つけ出した後、この雲を使ってどう解消したらいいのか(「何に変えればよいのか(What to change to?)」)を考える。

未来問題構造ツリー(Future Reality Tree)

雲(対立解消図)を使って見つけた問題解決策を実行したらどうなるかを検証するための手法。根本的な問題が解消した状態で現状問題構造ツリーがどう変化するのかを示し、新たな問題(ネガティブ・ブランチ)が発生していないかどうかなどを検証する。

ネガティブ・ブランチ(Negative Branch)

雲(対立解消図)を使って見つけた対立解消アイデアを実行した場合に、新たに発生する問題(マイナス面)。未来問題構造ツリーを構築して示され、「マイナスの枝」とも呼ばれる。

前提条件ツリー(Prerequisite Tree)

思考プロセスの「どのように変えればよいか(How to cause the change?)」を考えるための手法で、目標を達成する過程で発生する障害(前提条件)とそれを克服する中間目標を展開する。現状問題構造ツリーや未来問題構造ツリーと異なり、因果関係でなくアイデア実行の時間的順序関係が重要。

移行ツリー(Transition Tree)

思考プロセス最後のステップで、実行計画に相当する。前提条件ツリー展開した各中間目標を達成するために何をしなければいけないか、必要な行動を示す。前提条件ツリーと同様、時間的順序関係が重要。

ステートメント(Statement)

思考プロセスの各ツリーや雲(対立解消図)の中に描かれる一つひとつの文言のこと。英語の直訳は、声明、陳述など。