ローマ亡き後の地中海世界 上

サラセン人

この本で描かれているのは、イスラム勢力の拡大とその先兵となったサラセン人の海賊の話だ。
サラセンとは、元々は古代ギリシア語のアラブ民族の一部で砂漠に住むベドウィン人を指すであったが、この時期に北アフリカを制圧したイスラム教徒のアラブ人を「サラセン人」と呼んだ。

拉致

紀元七二七年の大成功は、それに続くいくつもの海賊行を生み出した。現代の国別ならばリビアチュニジアアルジェリアやモロッコになる北アフリカ西域一帯の海港では、鉄の鎖につながれたキリスト教徒の奴隷の姿も珍しくなっくなりつつあった。
これに準じて、その当時の海賊の襲来を一身に受けていた感じのシチリアでは、人々の恐怖が天井知らずに高まる。彼らの頭の中には、
北アフリカに住むイスラム教徒=サラセン人=海賊
の図式が彫りこまれるのもこの頃に始まる。

巻末に、「イタリア全土に分布するサラセンの塔」が掲載されている。たいへんな数だ。今に残る「サラセンの塔」を見に訪れたいものだ。