忍び外伝

主な登場人物:

  • 文吾衛門・・・百地丹波の下人
  • お鈴(りん)・・・文吾衛門の弟子
  • 黒子丸(ははくろまる)
  • 百地丹波・・・南伊賀を治める忍びの大家の当主
  • お式・・・百地丹波の後妻

天正の伊賀の乱に生きた伊賀者らのドラマを、松平信康の自害と信長の本能寺の変などを絡めて描いている。
忍びの活躍には引き込まれる。本能寺の変の異説にも触れている。

「余が人間であることを捨て、名実ともに六天魔王になったことを、広く世間に知らしめたい。また、余は我が家臣団の心中を知りたいのだ。一度死に、再び余が生き返ってくるまでの数日の間、お前に天下を譲り、その間に家中の者どもがどう動くか、じっくりと見極めたいと思っている。」
「そのために、拙者が大殿を討つふりをしろと?」
「ふりではない。本当にやるのだ。」
・・・・・
「饗応役は他の者に任せるから放っておけ。いや、むしろ家康めがこの辺りをうろうろしているうちに、余が討ち倒される異変があれば、あの少ない手勢では無事に三河へは戻れまい。捨ておけ。武田征伐の成された今、家康など生かしておいても邪魔なだけだ」
苛立った様子で信長は言った。それはおそらく本音であろう。
五月十七日、光秀は家康の饗応役を免じられ、居城である坂本城に帰城した。それから軍を率いて丹波亀山城に入るまでの十日ほどの間、光秀の動向は知られていない。