*[本]バリュー・ネットワーク戦略

バリュー・ネットワーク戦略―顧客価値創造のeリレーションシップ

バリュー・ネットワーク戦略―顧客価値創造のeリレーションシップ

eプロセスによる競争優位

ウェブサイトをたんなる技術的なつくり物からビジネス上の成功へと変えていくための「カギは、ウェブ上で顧客がクリックをした、その先。それは、顧客の信頼・顧客にとっての価値を生み出すことであり、そして何よりも顧客維持を実現するようなビジネス・プロセスであり、ケイパビリティである。eコマースの世界で勝利を収めるのは、顧客とのリレーションシップと継続的な取引による「プロセスの富」を生み出すプロセス面での優位を獲得した企業である。」

eコマースにおける必須事項

「リレーションシップを拡大し、ウェブサイトを幅広く深い市場スペースに対するインターフェイスとして扱う。(従来ならば・・・:ウェブサイトを、孤立したオンライン店舗として扱う)」

eコマースの悲劇

「eコマースの悲劇を避けるためには、製品をオンラインで提供しているだけでは十分ではない。ウェブショップを開設することは、自社の製品の価格と入手方法を世界中に伝えることになるだけであり、コモディタイゼーションやマージンの極小化、競合他社数のかつてない増加といった事態に陥りやすくなる。価格競争はeコマースにおける成功には結びつかない。eコマースにおいて成功を収めるには、製品特性や価格以上の何かを提供する必要がある。オンライン・ブランドの信頼と価値を高めるようなリレーションシップを提供しなければならないのである。」

インターネットは究極の規制緩和である

「eコマースは、従来であれば決して密接な関係を持つことはなかった顧客、消費者、サプライヤー、企業を結びつける。これらの「つながり」が、電子経済を定義する。電子経済は、いまようやく明らかになりつつある多くの新たなルールによって支配されているのだ。インターネットはたんなる技術的な環境としてよりも、究極の「規制緩和」ととらえるほうが理にかなっている。」

eコマースのケイパビリティ

「eコマースの黎明期から先進的な企業が学んだことを、ここにまとめておこう。
マーケティングがカギである。
●物理的なオペレーションが、オンラインと同じくらいあるいはそれ以上に重要となる可能性がある。
●「クリック&ブリック」(オンライン+オフラインのチャネル)が新たな競争の舞台である。
●テクノロジー管理のプロセスは、たんにウェブサイトを立ち上げる以上に手間がかかる。
●組織的なケイパビリティ・プロセスを変革しなければならない。
●プロセスの価値を決定するのは顧客の視点である。」

顧客サービス

「eコマースは直接のリレーションシップによらず、ウェブを介して相互に交わすかたちで顧客を巻き込むため、企業と顧客とのつながりが欠落してしまう可能性がある。顧客は企業と連絡が取れなくなり、電話で延々と待たされるのと同じように、ウェブサイト上でのやり取りが途中で止まってしまうのではないかと心配する。このような心配があるからこそ、一日3000万ドルというデルの売上げの八〇%に関してコールセンターに注文確認の電話が入るのである。」

ケイパビリティのポートフォリオ

「アマゾンは大半の小売り企業に先がけて、迅速で正確な出荷は「顧客にとっては」バックブラウンドではなくプライオリティであることを悟った。アマゾンはその認識に沿って投資を進め、従来の戦略に逆行して流通センターを建設した。すべては、受注処理によって顧客にとっての価値を増すためである。この点に関して、現在アマゾンはほぼすべてのオンライン小売企業を凌駕している。同社は負債であるバックグラウンド・プロセスを資産であるプライオリティ・プロセスに変えたのだ。」

受注処理における例外

「「eコマース・タイムス」の報告によれば、顧客の十九%は製品を見つけるためや、製品の仕様に関しての質問に対する回答を受け取るために、助けを求めている。また、購入プロセスの過程で請求や商品の受け取り、購入完了のプロセスそのものについて質問する顧客も、全体の二十一%いる。注文を送った後、五八%の人が注文状況や出荷のステータスをチェックしている。商品を受け取った後、返品に関して質問する顧客も十九%いる。
アクセンチュアでは、二〇〇〇年初頭にショッピング体験の質に関する調査を実施している。調査チームは小売企業一〇〇社から四八〇件のギフトをオンラインで購入しようと試みた。だが、きちんと購入できたのはわずか三五〇件だった。失敗率は二五%近い。サイトの四分の一はクラッシュしていたり、作成中だったり、注文を受け付けなかったり、アクセス不能の状態だった。購入できた商品のうち、オンライン専業の小売企業では期日どおりに届かなかった例は二〇%にすぎなかったが、既存の小売企業では八〇%が約束した期日を守れなかった。」

ビジネスとテクノロジーのマネジメント

「テクノロジーは情報やコンピュータ能力の利用法を変えることによって、新たなビジネスモデルや新たなタイプの取引を可能にしてくれる。その明らかな例が、ウェブを利用した顧客によるセルフサービスの実現だ。」

チャネルの調和

「複数のチャネルを協働ではなく競争としてとらえてしまうことによって、チャネルの対立がeコマースをめぐる定番の話題になってしまった。だが、チャネルと顧客について考える場合、「対立」というとらえ方は間違っている。支流となるチャネル(あるいはコールセンターというチャネル、流通業者というチャネル、ウェブというチャネル)を設けるという判断は、問題を顧客からの視点ではなく企業としての視点でとらえる考え方だ。顧客の目にはチャネルの対立など映らない。顧客はただチャネルを選ぶだけなのだ。」

チャネルの統一

「顧客リレーションシップを統一するには、すべてのチャネルでプロセス・パフォーマンスと顧客満足度の水準が一貫している必要がある。コールセンターに電話した場合でも地元の支店を訪れた場合でも、あるいはウェブにアクセスした場合でも、同一の情報を顧客に与えるケイバビリティは統一的なリレーションシップの要である。」

付加価値サービスの提供

ソニーは自社のウェブサイトを使って消費者や法人顧客とのリレーションシップを強化しているが、それによって流通企業の立場を弱めてはいない。ソニーは、ウェブ上での交流や情報を生かして、その販売機会をどのタイプのパートナーに紹介すればいいかを評価する。流通企業の場合もあろうし、システム・インテグレーターやOEM企業、あるいは再販業者の場合もあろう。このような見込み客の「事前審査」によって流通業者は顧客との直接的なつながりを維持し、それと同時にソニー側でもウェブでの交流や集めたデータを売上げ増大に役立てているのである。
ソニーは自らの存在をチャネル・マーケティング・グループとしてとらえている。ソニーはリレーションシップやパートナーと協力するケイパビリティを向上させるためにウェブを活用している。・・・・・ソニーの狙いは、「流通ネットワークの尊厳を守る」ことである。」

コンテンツ面での課題

どんな企業でも顧客、サプライヤーその他とのリレーションシップを改善し、レバレッジできるようなコンテンツを持っているのだ。問題はコンテンツを持っているかどうかではない。それをどのように活用するのがベストかということだ。コンテンツの利用方法を見つけるということは、自分が知っていること(それがコンテンツである)を顧客やサプライヤーのために活かす方法を発見し、リレーションシップにおける「win-win」状況を見つけることでもある。企業の多くはいかに述べるようなタイプのコンテンツを自由に使えるのである。
●顧客の嗜好およびプロフィール
●製品情報および仕様
●在庫状況・入手可能性
●メンテナンス履歴・経験
●製造に必要な原価および時間
●従業員のスキル