*[本]実践 戦略的社内コミュニケーション

実践 戦略的社内コミュニケーション―社員に情報をいかに伝えるか

実践 戦略的社内コミュニケーション―社員に情報をいかに伝えるか

信頼

「組織における信頼の評価」という最近の研究書が、社員の信頼を得るために必要な条件を挙げている。それらの条件は、仕事に対する満足度と効率との相関性が強い順に、ランク付けされている。
1 社員への気配り(心配、容認、安全に対する配慮など)・・・相関度91%
 例:経営陣は社員の心配事に耳を傾ける
2 オープンであること、正直であること(共有する情報の量、正確さ、誠実さ)・・・相関度88%
例:社員が仕事に関して自分の意見を聞いてもらえる
3 アイデンティティ(達成目標、価値観、信念を共有する)・・・相関度84%
 例:社員が会社に対して一体感を感じる
4 信任・頼りがい(一貫性、当てにできる行動)・・・相関度80%
 例:私の直属の上司は言ったことをきちんと実行する
5 能力(同僚や上司の有能さ)・・・相関度75%
 例:自分はこの会社の人たちの能力にとても満足している

また、最も多くの支持を得たのは、次のような項目だ。
1 私の直属上司(現場責任者)はチームのメンバーに対する情報伝達において真面目に努力している
2 私の直属上司は秘密を守る
3 私の直属上司はチームメンバーとの約束を守る

非公式なコミュニケーション

アライド社のイントラネットには「噂工場」と呼ばれるページがある。そこでは社員が耳にした会社に関するどのような噂でも投稿するように促されれている。さらに、社員は掲載された噂に関して自分の知っている限りで、感想を聞かせてくれるよう勧められている。
当初、経営陣は、噂に対する反応が非公式な情報源から出されることに不安を抱いていた。しかし、実際には、それらの噂に対して応えてきたのは公式な情報源だった。つまり、正確な情報を持っている部署の社員からだった。まれに間違った感想が掲載された場合などは、担当部署の社員がすばやく、正確な情報を掲載するようになった。結果、アライド社には噂はなくなった。

社員向け事業報告書

事業報告書は、企業にとって大事な投資家に、その年の業績の要約や来期の見通しを伝えるものである。しかし、事業報告書は何も投資家向けだけのものではない。大多数の企業にとって事業報告書は一年にうちに出される文書で最も重要なものである。顧客や、戦略的パートナー、取引先、政治家、規制当局、金融機関、メディアなども事業報告書を頼りにする。
だが、社員にとっては限定的な価値しかない。
もちろん、社員も事業報告書を読むべきである。特に、401Kプランを通じて自社株を買っている者はそうだ。しかし、事業報告書は社員の観点からは非常に重要な要素が欠けている。それは彼らの働きが企業の業績にどのように寄与したか、また、来期に向けて企業は自分たちに何を求めているかだ。
そこで多くの企業では、社員向けの事業報告書を発行している。社員向けは一般向けと比べてそれほど豪華なものでなくてもよい。社員向けの事業報告書は企業の実績に対する社員の寄与を賞賛する内容が含まれている。さらには、社員の努力と企業とを関係づけ、無味乾燥な財務数値に意味や背景を与えるものになっている。事業報告書を読むことによって、社員は次の12ヶ月間に会社が自分たちに何を望んでいるかを理解できるようになる。

戦略に特化したサイトを作る

社員が企業戦略の全体像を理解しない限り、彼らにその役に立ってもらうことは難しい。イントラネットを使えば、社内の様々な階層の社員に対して、企業の戦略を説明することができる。
まずは、企業戦略に特化したページを作ることだ。そのようなサイトを持つ企業は多くない。どの部署も自分のところだけで企業戦略のすべてを担当するわけではないし、戦略を作成する重役がイントラネットの作成に関わることも少ない。社内コミュニケーション部門において企業戦略を扱ったサイトを作れるならば、作るのが望ましい。社員がそれを個別の情報源として見てくれればそれでもよい。
できれば企業戦略を扱うサイトは、他のサイトと分けて作るべきだ。そのトップページではサイトの内容を分かりやすく紹介し、戦略のキー要素を載せるようにする。もし、企業の戦略がいくつかの柱によって成り立っているならば、それぞれがさらに詳しい情報へリンクして機能するようにしなければならない。
・組織図、連絡先、それぞれの戦略の実行を担うチームからの最新情報。
・戦略に直接かかわる進行中の活動へのリンック。顧客囲い込みでは、営業担当が顧客の定着についてのアイデアを共有しているサイトにリンクするなd。
・それぞれの話題に関するディスカッションへのリンク。
・各課題についての役員のスピーチの音声や動画。
・各課題に関する統計。例えば、前述した顧客の囲い込みの場合、顧客を失うコストや新規顧客獲得のコスト、または、投資に対するリターンについての既存顧客と新規顧客の比較。
・競合相手や顧客層などの市場データ